法務局で記録されている不動産の登記情報には、現在の不動産の所有者の氏名と住所が必ず記載されています。現在の所有者が誰でどこに住んでいるのかを分かるようにするためです。登記情報は公示されるので、不動産の買主が誰を相手に売買契約をすればよいのかが特定できます。また銀行などの金融機関が担保にする不動産の所有者を確認でき、安心してお金を貸す事ができます。
住民票の異動と不動産の住所変更手続きは別?!
引っ越しなどで住所が変更になった際に、住民票の異動手続きを市役所などで行うことはご存知かと思います。ここで注意したいのが、住民票の異動手続きと不動産登記の住所変更は別の手続きということです。住民票の異動手続きと連動して不動産登記の住所が変更になることはありません。別途住所変更の登記申請を行う必要があります。
住民票の手続きを行わない場合は、健康保険証や介護保険証、他の役所関係からの書類などを新たな住所へ送付してもらえない事態が起こり得ますが、不動産の住所変更の手続きを行わなかったからといって特にペナルティーはありません。そのため、住所変更後に不動産の住所変更手続きを行う方はほとんどいないのが実情です。また、この手続は市役所での住民票の異動手続きよりも煩雑で、一定の登記の知識が必要となることも手続きが遠のく原因のひとつだと考えられます。
不動産の住所変更登記を行わなければならない場面とは?
ペナルティーはありませんが、不動産の住所変更登記を行わなければならない場面があります。それは不動産の売却をしたり、銀行に担保として差し出すときです。なぜなら、不動産登記法では登記上の所有者の氏名・住所が同一でないと所有者と認めないという考え方をとっているからです。売却の際に買主や不動産業者に免許証などの身分証を提示しても、住所変更の登記を省略する事はできません。そのため司法書士は、住所変更の登記に関しては特に慎重な姿勢で臨みます。住所変更の登記を先行して行わなければ、後に続く売買による所有権移転登記、住宅ローンなどの抵当権設定登記が却下になり、場合によっては損害賠償の問題に発展してしまうからです。
過去にあった事例
登記の申請をすると「登記中」となり登記情報の閲覧ができません。不動産の売買では銀行などで行う決済の当日、司法書士は必ず登記情報を確認します。この行為のよって売買対象の不動産に差押えや、他の人間に売却していないかなどの安全性の判断をします。しかし登記の閲覧ができなくなってしまうと安全確認ができないため、決済は延期または流れざるを得ません。この事例では延期によって生じた損害賠償を売主は請求されてしまったのです。
不動産の売買では専門的な知識が必要?
不動産の売買では「登記中は登記情報の閲覧ができない」など専門的な知識が必要です。最近ではインターネットなどで“~不動産の登記を自分でやろう!~”といった情報が増えてきているように思えますが、なにかが起きた際にサイト作成者が責任をとってくれることはありません。ご自身で登記を行って費用負担を軽減させたいお気持ちは理解できますが、複数の当時者が関わる不動産売買の手続きをご自身で行うのはリスクが大きいと言えます。
専門家に依頼した場合の報酬は?
不動産の住所変更登記を司法書士に依頼した場合、1万円~2万円程度の報酬となります。