成年後見制度が2000年に施行されてから20年以上が経過しておりますが、十分な理解のもとに申し立てがなされているかは現在でも課題と言ってよいかもしれません。それというのも成年後見制度を利用しなければ対応できないケースと、成年後見制度を利用せずとも対応できるケースを明確に理解しないまま成年後見の申し立てがなされているケースが少なくないように思えます。そこで成年後見制度を利用すべきケースと、成年後見制度を利用する必要がないケースの分類をしてみました。
成年後見制度を利用した方が良い場合
- 本人の不動産の売却
認知症になった本人を介護施設に入所させてあげたいが、その費用に心配があり本人の居住用不動産を売却して費用を捻出したい場合です。しかし肝心の本人が認知症のため不動産の売買契約などの意思表示が必要な法律行為を行えません。そこで認知症の本人のため成年後見人を選任し不動産の売却を行うのです。不動産は高価な財産です。そのため売却の際には不動産業者、所有権の名義変更を行う司法書士は本人の意思確認を厳重にチェックします。その際に認知症などで本人の意思能力が十分でないと判断された場合は売買を行うことはできません。司法書士や不動産業者の責任問題に発展しかねないからです。成年後見の申し立てをせざるを得ないと思われます。 - 定期預金の出金・移管
高齢のため足腰が衰弱した親の通帳を子が管理するケースは珍しくないかと思われます。その場合、親から通帳のカード番号などを聞いていて生活費の支払いや日用品の購入の資金をATMで出金することが多いでしょう。しかし定期預金など100万円単位の大きなお金を出金したり、他の通帳に移管したりなどは、金融機関が本人確認を求めてくることが多いです。親が認知症になっていれば金融機関は成年後見人の選任をすすめてきます。手放しで定期預金の出金や移管を認めると、やはり金融機関の責任問題が生じてくるからです。こういったケースでも成年後見人の申し立てはやむを得ないかと思います。 - 民事訴訟
本人が交通事故や仕事先の業務などで重傷を負った場合には、その損害の賠償金を請求するため裁判を提起することとなるのが一般的です。そのため弁護士に依頼をして裁判を進めるわけですが、重傷で本人の意識が長期間経過しても回復しない場合は、弁護士に依頼をしても裁判を提起することができないのです。なぜなら弁護士は裁判の依頼を受けて代理人となるわけですが、その依頼を本人から受けなければ代理人となれません。意識不明の本人に代わって弁護士に依頼をしてくれる成年後見人が必要となるのです。
必ずしも成年後見制度を利用しなくても良い場合
- 介護施設・病院の入院手続き
介護施設や入院の手続きは契約書に署名捺印をする法律行為です。法律行為である以上は原則として本人が署名捺印を行うべきです。しかし介護施設の入所の契約の段階では本人が認知症又は肉体の衰えによって契約書に署名するのが困難なことが多いです。従って介護施設や病院はお子様、兄弟などの近しい親族が代わりに契約をすることを認めてくれることが多いです。もっとも、代わりに契約を行う親族に対して身元引受人や保証人になる事を求めてくるかと思われます。身元引受人や保証人になってくれるほど近い親族だからこそ、本人に代わって契約をすることを認めてくれるともいえるでしょう。ただしお子様方が不仲の場合は話が変わってきます。成年後見制度を利用せずに、特定のお子様が事実上通帳などの財産を管理しているケースでは、親である本人の死後にお金の使途をめぐって争いになる可能性はとても高いといえます。兄弟姉妹が不仲の場合は、中立的に裁判所の監督下に置かれる成年後見人に介護施設・病院の入院手続きをはじめ、財産の管理などを任せた方が良いかもしれません。
成年後見制度は一度申し立てをすると、特段の事情がない限り、本人がお亡くなりになるまで継続される制度です。後見人の交代は正当な理由があれば認めてもらえますが、不動産を売却して目的を達成したから後見制度の解除をしたいといった事は現在の制度では認められていません。成年後見制度を利用するかどうかは十分な検討が必要です。親族の協議の他、司法書士、弁護士などに相談をしていただけたらと思います。
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