不動産の権利書は再発行できない?!
不動産を売買、贈与、相続などによって取得した場合、法務局から不動産の権利書が発行されます。不動産の権利書は感覚的にとても重要な書類であることを、大抵の方は認識されているのではないでしょうか。そのため権利書を取得した方は大事に保管なさっていると思われます。しかし大事な権利書とはいえ長期に及ぶ保管期間の経過によって自宅のどこに保管をしたのか忘れてしまうケースや、引っ越しの際に紛失をしてしまう事があります。残念ながら権利書を一度紛失してしまうと再発行をすることが認められておりません。権利書を紛失してしまった場合は、悪用されることを避けるために法務局に権利書を紛失してしまった事を報告しましょう。そうすれば権利書の悪用を事前に防止できる可能性が高くなります。
不動産を売却する事が事実上不可能?!
権利書の主な役割は不動産の所有者である事を証明することですが、権利書を紛失してしまった場合は不動産の所有者ということが一切証明ができなくなってしまうのかというとそうではありません。なぜなら法務局に不動産の所有者として住所と氏名が登記がされているからです。もっとも権利書を紛失してしまった状態では、登記されている所有者の住所氏名と、現在不動産を所有している人が同一であることを証明することが困難となり、この証明ができなければ不動産を売却する事が事実上不可能となります。なぜなら不動産を購入する側からは、権利書を持っていない売主を不動産の所有者として信用することができないからです。
登記内容を証明する代表的な方法「本人確認情報制度」
法務局に不動産の所有者として登記されている住所・氏名と、不動産の現在の所有者の住所・氏名が同一である事を証明する代表的な方法に、司法書士が作成する「本人確認情報制度」があります。この制度は司法書士が不動産の所有者と面談をして印鑑証明書、固定資産税の請求書、運転免許証、売買契約書、住民票、戸籍謄本などの複数の資料を確認することで、登記簿上の所有者と現在の不動産の所有者が同一人物であることを証明する制度です。登記の際には作成した本人確認情報に司法書士の職印による押印と、職印証明書を添付します。つまり資格者である司法書士の信頼に重きをおいた制度といってよいでしょう。権利書が存在しない場合に行われる不動産の売買や、銀行の抵当権の設定はこの本人確認制度を利用することがほとんどです。登記の専門家である司法書士が本人確認を行い、登記されている所有者の住所氏名と現在の不動産の所有者の住所氏名が同一であることを認めているのであれば、売買や抵当権の設定契約を締結しても大丈夫と不動業者、買主、銀行の担当者が安心できるからです。
「事前通知制度」とは?!
権利書を紛失した場合に所有権移転登記、抵当権の設定登記を行う制度として他には「事前通知制度」があります。この事前通知制度は所有権移転登記の際に権利書を提出しない理由として「紛失」などと申請書に記載をして登記の申請をします。登記の申請後に法務局から登記がされている所有者の住所宛に法務局から書類が届きます。その書類に実印を押印して法務局に返送をします。返送された書類に押印された実印を法務局が申請書に添付された印鑑証明書の実印と同一であるか照合をして一致していれば登記が完了となる制度です。司法書士が作成する本人確認情報と異なって、事前通知制度は権利書を添付しないまま通常通りの所有権移転登記を申請するだけですので、売主の負担が少なく手軽な制度に思えます。しかし事前通知制度は法務局が権利書を紛失した所有者宛に事前通知の書類を発送した日から2週間以内(外国在住の場合は4週間以内)に法務局に書類を返送をしなければ登記が却下されてしまいます。そのため大きなお金が動く不動産売買や、銀行の抵当権設定で事前通知制度が利用されることはないと言っても過言ではありません。事前通知制度の利用が向いているのは、安価な不動産の売買や、親・兄弟などの身近な親族へ不動産を贈与するケースなどです。
どのような場合に「事前通知制度」を利用すればよいのか。また、司法書士によって慎重に本人確認が行われる「本人確認情報制度」を選択した方が良いかは、司法書士に問い合わせをしていただければと思います。