日本では遺言書を作成する人が世界の国々と比較して極めて少数であると言われております。一方で生命保険の加入率は世界でもトップクラスだそうです。遺言書の作成も、生命保険の加入も、ご自身の死後に親族が受け取る金銭等をご自身の意思で決定する点では共通の理念があるはずです。しかし日本では遺言書の作成には二の足を踏む方が圧倒的多数派なのです。遺言書を作成する目的として、遺言者様がお亡くなりなった後の親族間における紛争の予防が考えられます。遺言書は確かに親族間の紛争を防止する効果はあります。ただ親族間の紛争の予防以上に、遺言書を作成する最大の意義は、遺言書を作成し文書に残す事で、人生最後の意思を実現する事にあると考えます。特にその意思決定が長い人生をかけて蓄えた財産の行方であるなら、なおの事です。
当たり前の事ですが遺言書は生きている間にしか書く事ができません。しかも遺言の意思決定ができるほどに、判断能力が十分である必要があります。ご自身が正常な判断能力を有したまま遺言が残せる期間を確実に予測するなど、誰にもできないのです。なにしろ自分の人生の先に何が起きるかなど、確実に予測するのは不可能だからです。だからでしょうか、実際に当職が遺言書作成のお手伝いさせていただいたお客様から「ほっとした」「スッキリした」などのお声を多くいただいております。未来の事など誰にもわかりませんが、少なくともご自身の財産を相続される方を決定できた事に安堵したからだと思います。
特にお子様がいらっしゃらない御夫婦、あるいは独身の方は遺言書を作成する事を強くオススメします。あなた様の死後思いもよらない方に財産を取得する権利が発生してしまうからです。例えばたいした付き合いもなく口も聞いた事のないような甥、姪や、行方不明の兄妹。ご兄弟が多い方ほどこういった方にご自身の財産が相続されてしまうのです。当然相続の手続きも、膨大な時間がかかります。2年以上かかってしまう事もあるのです。
遺言書の作成に抵抗を示される方の多くは下記のようなご心配をなさっているのではないでしょうか。
・作成にたくさんの高度な法的知識か必要そう
・一度遺言書を作成したら内容を変更できなさそう
・遺言書に書いた財産を処分できなくなる
上記のご心配は全て誤解であります。もっともシンプルな遺言は「私の全財産を○○□□に相続させる」の1行で完成いたします。また一度作成した遺言の変更はいつでも、どこでも、ご自宅でも可能でございますし、遺言書に記載なされた相続人にお譲りになる予定の財産も、ご自由に処分が可能でございます。