不動産を売却・贈与等により所有権を移すとき、不動産の所有者は原則として登記済証(いわゆる権利証)又は登記識別情報(以下、まとめて権利証と表記します。)を法務局に提出することが必要です。これらの書類は所有者が権利を取得したときに交付されるもので、紛失しても再交付されないため、法務局としては権利証を提出したということは不動産の権利を移す意思があるのだと判断する材料になります。それでは、権利証をなくした場合、所有権の移転登記はどうすれば良いのでしょうか。方法は以下の3つがあります。
①事前通知
所有者の移転登記の申請後、法務局から本人限定受取郵便で所有者に通知(事前通知)が届きます。この書面に実印にて押印し法務局に提出することで、所有者に移転の意思があることを確認します。注意したいのが、事前通知を2週間以内に法務局へ提出しなかった場合、登記は却下されてしまいます。トラブルが起こる可能性があるため、金銭が伴う売買等の取引では使えないと言っていいでしょう。
②資格者代理人による本人確認情報
登記申請を代理する司法書士等が、所有者であることを確認したという書類を法務局に提出する方法です。この方法であれば、事前通知が省略できるため登記が却下される心配はありません。そのため、売買等の取引の確実性を担保する手段として権利証を紛失した場合は、この方法が最も多く利用されます。この場合、司法書士等への報酬が別途必要となります。
③公証人による認証
所有者本人が公証役場に出向き、公証人が本人確認をする方法です。免許証等の本人確認書類と司法書士への委任状を持参し、公証人の面前で署名及び実印による押印(印鑑証明書により照合)をすることで、委任状に公証人による認証文が付されます。これを法務局に提出することで権利証の代わりになります。注意したいのは、所有者の登記上の住所が3か月以内に変更がされていた場合、前住所通知を省略できない点です。
以上のように権利証がなくなった場合、手間や費用がかかります。しかし、移転登記手続きを行う方法はありますのでご安心下さい。