現在の日本は戦前と比較すると多様な社会・人間関係が存在します。それに伴い法律上の権利関係も複雑になっております。こういった社会では権利を主張したり、あるいは権利が失われたなどと主張する紛争は避けられないのかもしれません。このような法律上の争いを収める手段として、ご存知のように裁判所が存在します。
ここで問題になるのが、裁判には時間がかかるということです。スピディーな解決で知られる簡易裁判所ですら、3カ月以上はかかります。自己の主張を一切妥協しないまま判決まで求めるのであれば、簡易裁判所でも半年以上かかる事もあります。このように裁判を行うと、裁判所に出頭する労力や精神的負担は相当なものとなるのではないでしょうか。
そこで登場するのが、裁判外の和解と言われている制度です。テレビドラマや漫画などの影響のせいか、法的な争いが生じた場合、裁判所の法廷で争って解決しなければならないというイメージがあります。しかし日本には裁判所の法廷で争う前に話し合いによって歩み寄り、解決する制度が存在するのです。
①当事者同士の示談または和解
裁判所の関与なしに当事者間で話し合い、合意した内容を書面にします。
メリット
裁判所を利用しないため、もっとも負担がないと言えます。費用面での負担も少なくて済むでしょう。
デメリット
裁判所の関与が無いため和解内容に確定判決のような効力がありません。もし相手方が合意に違反した場合は訴訟を提起しなければならない可能性があります。
②民事調停
和解を前提とした裁判所で行われる話し合いです。
メリット
通常の訴訟の様に相手方に勝たなければならないといったプレッシャーはほとんどありません。調停委員が話し合いの進行をリードしてくれます。
デメリット
調停で話し合いがまとまらなかった場合は、最終的に通常の訴訟を利用する事になります。調停はあくまで話し合いの場だからです。調停は主張・証拠によって相手方の言い分を否定し権利を勝ち取る訴訟とは、性質が根本的に異なるからです。
③訴え提起前の和解
通称即決和解などと呼ばれております。①で作成した示談書や和解書などを裁判所にもっていき、裁判所の判決と同じ効力をもたせる手続きです。
メリット
当事者が作成した和解書・示談書が通常の裁判の手続きなしに、当初から最終段階である判決と同じ効力を付与してもらえます。通常の裁判とは比較にならないほどに当事者の負担を大幅に軽減できるでしょう。
デメリット
争っている当事者双方が共に定められた期日に出頭しなければなりません。また手続き完了まで1~2カ月程度の時間がかかります。
裁判以外にも上記のような和解方法があります。訴訟を提起する前に“本当に裁判をする必要があるのか?”“話し合いで解決できないか?”と今一度ここで考えてみては如何でしょうか。そして、当事者同士では角が立つ、話し合いが進まないと感じた時には、専門家というフィルターを通してみてください。間に誰かが入ることでスムーズに事が運ぶことが多々ございます。