不動産の時効取得日本の民法には時効制度が存在し、これには主に二つのタイプがあります。一つは消滅時効で、これは時間の経過によって借金などの請求権が消滅するものです。もう一つは取得時効で、これにより時間の経過と共に不動産などの所有権が得られるものです。不動産の時効取得は後者に該当し、一定期間経過することで不動産の所有権を取得できます。
当事務所では、過去に個人の墓地や隣接地の空き家及び土地の時効取得を行った経験があります。墓地の取得は一見違和感を覚えるかもしれませんが、墓地も不動産の一部であり、相続による名義変更の対象になります。しかし、墓地は通常の財産と異なり、相続財産としての認識が希薄な傾向にあるため、名義変更を行わないケースがしばしば見られます。
不動産登記において、名義変更が長期間行われない場合、相続人の数は増加し続けます。例えば、100年近く名義変更がなされていない場合、相続人が50人前後に達することも珍しくありません。このような状況では、墓地の敷地を取得したいと願う人がいても、50人の相続人全員との交渉は非常に困難です。
このような場合、時効取得制度を利用することで、多数の相続人からの手続き協力を必要とせずに、墓地の敷地の名義変更が可能となります。不動産の時効取得にはいくつかの要件があります。これには裁判所に訴訟を提起すること、時効取得対象の不動産を20年以上占有すること(10年で取得可能なケースもあるが、ここでは省略)、そして所有の意思があることなどが含まれます。
なお、司法書士が訴訟で代理人となれるのは、訴額が140万円以下、または不動産所有権に関する訴訟の場合は520万円以下という制限があります。したがって、司法書士が代理で行う時効取得訴訟は限定されるかもしれませんが、時効取得対象の不動産は通常、価値が低く、固定資産税評価額も低額であることが多いです。これは、価値が低いために名義変更がされずに放置されることがあるためです。
しかし、価値が低い不動産が、価値のある不動産に大きな影響を及ぼすこともあります。例えば、広い敷地内の中央に放置された墓地がある場合、その敷地の売買価格や売却可能性に大きく影響を及ぼす可能性があります。このような場合は、時効取得訴訟を検討する価値があります。