かつては不動産登記、商業登記の申請のほとんどは、司法書士に依頼するのが一般的でした。しかし最近ではインターネットによる情報の普及、法務局の相談窓口の設置などにより、ご自身で登記申請をする割合が徐々に増えてきているそうです。住所変更登記や相続人の数が2、3名程度の相続登記であれば、法務局の相談窓口に何度か足を運ぶことで、登記の経験の無い方でも申請を行うことができるでしょう。
ここでは、本人申請に不向きな登記をご紹介したいと思います。
所有権移転登記
売買を原因とする所有権移転登記は、不動産の権利を獲得する権利者と、不動産の権利を失う義務者の利益構図が反対の関係となります。不動産の買主は登記を先にして欲しい、不動産の売主はお金を先に支払って欲しいと相互に義務の履行を要求する訳です。こういったケースでは、司法書士に登記を依頼した方が良いと考えています。登記の専門家である司法書士が申請をすることにより、お互いの利益を中立的な立場で判断し、買主・売主共に安心したお取引を確実に行うことができます。
相続人の数が5人以上存在する相続登記
典型的な例が、相続人に兄弟姉妹がいる相続です。なぜなら集めなければならない戸籍・除籍謄本の数が、通常の親子間の相続と比較して、3倍~4倍(またはそれ以上)に増加するからです。また、遺産分割協議書の内容も複雑で専門的なものとなります。遺産分割協議書には、相続人全員から署名捺印をしてもらい、印鑑証明書も相続人全員から取得しなければなりません。このように大変な労力や時間がかかる上、精神的負担も少なくありません。相続人にご兄弟など複数の方が関わる相続登記では、司法書士に依頼した方が、心にも体にも優しいと私は考えております。また本人申請のデメリットとして、法務局が平日しか開庁していないこともあげられます。仮に本人申請を行い書類に不備があった場合、直接法務局まで足を運び修正しなければなりません。文字がひとつでも誤っていた場合、それだけでも修正の対象となります。不動産登記は権利関係を公示する、非常に厳格ものだからです。
司法書士に依頼するメリットとしては、労力や時間、精神的負担の軽減だけではなく、相続税や成年後見など、法律や税金のアドバイスも受けることができます。また当事務所では、わかりやすく保管できるよう、権利書や相続関係書類を冊子にしてお客様にお渡ししております。