少し重いテーマになりますが、現在の日本では認知症や統合失調症といった精神疾患を患っている方が急増しているようです。認知症の増加は高齢者の増加に比例しています。また統合失調症は社会の認知度が高くなっていった事により、これまでさほど問題視されなかった症状も医学的に統合失調症の類型に分類されることが判明しているようです。統合失調症の症状は重いものから軽度のものまで症状は様々です。統合失調症の患者の数はなんと100人に1人と言われています。
症状を自覚することが大切
認知症と統合失調症に共通しているのは症状を自覚することが可能なことです。初期の段階で自覚することができれば薬などの服用により、症状が重度化することを遅らせたり、時には進行そのものを防ぐことができる事例もあるようです。もっとも、日本ではまだまだ精神疾患に対する偏見は根強いです。そのため症状が出ても認知症、統合失調症であることを受け入れることができず治療をせずに放置をしてしまい、重度化してしまうケースが多いようです。
症状が軽度のときの対応が重要
当事務所にご相談いただいたお客様でご自身が認知症である事を自覚なさっている方や、統合失調症である事を自覚なさっている方からご相談を受けたことがあります。症状の軽い現在の状況で、将来のご自身の財産の管理や処分など良い対策はないかといったご相談でした。そこで以下のような方法をご紹介いたしました。
民事信託の活用
判断能力が低下してしまうと不動産の売却や預貯金の払い戻しなどが容易にできなくなってしまいます。その場合は成年後見制度を利用するなどの対応が必要となりますが、成年後見制度は金銭的にも精神的にも負担が大きくなりがちです。そこで民事信託契約のよって財産の管理・処分を行う親族を決めておけば、成年後見制度を利用しなくても財産の管理・処分が選択できるケースが大幅に増えます。この方法のメリットは、信頼できる当事者同士の契約で財産の管理・処分方法、条件等を設定することができることです。デメリットは、裁判所など公的機関の関与が無いため監督機能が弱い点にあり、金銭的に大きなトラブルが発生しかねない事です。民事信託契約は家族などの信頼できる間柄で締結する事をお勧めします。
遺言書の作成
死後にご自身の財産の行方を決定するもっともポピュラーな方法です。自筆証書遺言や公正証書遺言などがあります。自筆証書遺言は手書きで完結できるという手軽さがあります。しかし紛失のリスクと長期に及ぶ保管のストレス、遺言書の検認の手間などの負担があります。そのためそれらのデメリットをクリアしている公正証書遺言を当事務所はおすすめしていました。しかし令和2年7月から法務局で遺言書を保管する制度が施行されこの保管制度を利用することにより、遺言書の紛失や保管のストレスも軽減されました。さらには遺言者の死後に裁判所の検認手続きも不要です。ご注意いただきたいのは、遺言書を法務局に保管する手続きの際に必ず遺言書を作成した本人が行かなければならないことです。現在のところ司法書士や弁護士による代理での保管は認められておりません。