日本の法律には「時効」という制度が存在します。有名な時効制度といえば刑事訴追ができなくなる犯罪事件の時効制度を思い浮かべるかもしれません。(※殺人罪・強盗殺人罪については時効制度が一部廃止されています。)しかし皆様方の生活に身近な時効制度は刑事訴訟法でなく、民法や商法等に規定されております。民法や商法の時効制度では、一定の期間が経過する事により権利を取得できたり、あるいは権利を失ったりするのです。権利を取得できるのを取得時効といい、権利を失うのを消滅時効といいます。今回は「消滅時効」についてお話をさせていただきます。
民法167条では「債権は10年間行使しないときは消滅する」と定められております。この条文だけ見ると借金の消滅時効は10年なんだなと判断してしまうかもしれません。しかしこの条文で規定されている10年という期間は原則であり、借りた相手によって消滅時効の期間は変わってきます。例えば「相手方が商人である場合は商事債権といって消滅時効の期間は5年」となっております(商法522条)。
5年で消滅時効にかかる債権
消費者金融などのいわゆるサラ金業者の債権は5年で消滅時効にかかります。銀行からの借入も5年で消滅時効にかかります。ただし家族、友人などの個人からの借入の場合は原則通り消滅時効の期間は10年です。
10年で消滅時効にかかる債権
信用金庫からの借入の消滅時効は10年とされております。信用金庫は商人という扱いではないからです。また、住宅金融支援機構(住宅金融公庫)の債権も消滅時効の期間が10年となっております。
ここで注意したいのが、5年で消滅時効にかかるはずの借金の消滅時効の期間が10年に延ばされてしまうケースです。それは裁判によって敗訴の判決、または和解が成立してしまった場合は、以後債権の消滅時効は10年となってしまうのです。多数の借入がある方は、裁判所からの郵便物を消費者金融からの督促の延長か何かだと判断し、無視してしまうことがあります。しかし、裁判所からの裁判の呼び出しを無視し裁判当日に欠席してしまうと、無条件に敗訴となってしまいます。裁判所からの郵便物は絶対に開封して内容を確認してください。5年の消滅時効にかかっていたはずの借金が、敗訴によって時効期間が10年に延長されてしまいます。
また、債権者から電話や直接訪問などが行われた際に「必ず支払うから」などは言わない方が良いでしょう。直接訪問では、早く帰ってほしいがために支払いの約束をしてしまいたくなるかもしれません。しかし、民法147条の「承認」に該当し消滅時効の期間が振り出しに戻ってしまうのです。なお、消滅時効は援用をしないと効力が生じません。(※援用:時効制度を利用する意思を相手に伝えること)時効期間が経過しただけで消滅時効の効力を発生させてしまうと、支払いを継続したい方の意思を無視する事になるからという考え方があるからです。
消滅時効は相手方にその意思表示をすれば効果が発生します。論理的には口頭による意思表示でも構いませんが、口頭の意思表示では水掛け論となり、結局裁判となってしまいます。ですから証拠が確実に残る「内容証明郵便」で意思表示をするのが一般的です。内容証明郵便を消滅時効にかかった借金の債権者に送付すれば、送付以後はもう何ら接触をしてこない業者が大半です。まれに時効中断事由が存在すると電話をしてくる業者がおりますが、その場合にも対応方法がございます。お一人で抱え込まずに是非ご相談下さい。